以前から妻と「いずれ行ってみたいね」と言っていた飲食店があった。
そこは料理の質が高く、ネットでも評価が高く、人気があるようだった。
昼しかやっていなく、その日の仕込み分が終わると閉まってしまうお店だった。
探さないと分からないような隠れた場所にあり、一度妻と駆け付けた時も、すでに品切れしていた。
そんな人気店で今日食べる事が出来た。
丁度仕事でその近くを通った時に寄ってみたら、運よく入れたのだ。
お店に入ると、先ず物凄い熱気に驚いた。
「暑い!」この季節なのに灼熱の外の方がまだ涼しい。
メインの食材を加熱しているためなのだけど、お店の構造から熱がこもっているようだった。
それでもお昼を過ぎてまだお客さんは続々来ているようで、順番待ちの紙に名前を書き、待合席に座った。
店内を見渡すと、驚くほど張り紙が多く、おそらく店主からであろうメッセージが書かれていた。
メニューは木の札になって掲げられている他に手書きのものもあり、短期間のメニューなのか手書きの1枚紙のものもあった。
そして、手書きの基本メニューの一覧もあれば、並盛大盛の価格の比較の一覧があったり、トッピングや季節のメニューを書いたものが無秩序に貼られていた。
カウンターの上を見ると、待ち時間がよほどあるのか知恵の輪が置かれていた。
なんだここは?断捨離生活を送っている私にはかなりの違和感を感じた。
そしてその中でお客さんは仲間連れで来て、ゆっくり大盛を食べて、話に盛り上がっているようだった。
ビールを飲んでいる人もいたし、その人はついには他の団体とも話していた。
数台の扇風機を回して対処しているようだったが目が回る暑さだった。
そして私が案内された席はおそらくトップレベルに暑い席だったと思う。
席に着くと間髪を入れず注文を聞かれた。
私はもともとおよそこれが食べたいと決めてきていたので、素早く答える事が出来たが、もし「メニューを見たい」と言っていたらどうなっていただろうか?と思う。
と言うのも、全メニュー一覧のようなものがなく、別々の形でメニューの断片だけが提供されているのだ。
カウンターにある冊子に、昔からの基本メニューと追加メニューがあり、壁に大盛やトッピング、季節のメニューがある。
すべての可能性を考慮してからベストの注文を決めたいタイプの人はきっと考えあぐねただろう。
すべてのメニューを一覧出来る方法が無いのだから。
ひとまず注文は出来たので、気になっていた知恵の輪を触ろうとして驚いた。
「見本なので封を開けないで下さい」と書かれている。
待ち時間を有意義に過ごすための小道具ではないと言う事は、いったいなんの為の知恵の輪なのか!?
これをカウンターに置く必要があるのか?と。
冊子にある「店主のあいさつ」のような文章を読むと、「どうしてそう言う結論になるのだろう?」と言うような明らかな矛盾が気になった。
むしろ、見やすいメニューの一覧を挟んで欲しいと思った。
厨房を見ると、店長と思しき人物がひたすら頑張ってメイン食材を調理している。
他に女性が3人ほどでトッピングや上げ下げや注文とりレジなどをしている。
動線が一定で無く、脂汗を流して働いている。
壁を見ると「アルバイト募集」の張り紙もあった。
待望の注文が出てくると、異常なまでに作り込まれた盛り付けだった。
ネットで見て驚きのバエッぷりだったものが、そのまま出てきた。
食べると減塩食だったので手持ちのマイ塩をふんだんにかけて食べた。
帰り際、レジで対応してくれたのが店長と呼ばれている人物だったので、何か言おうかなと思ったが上手い言葉が思い当たらず言えず仕舞いだった。
「業務整理のために一度店を閉めた方がいい」そんな事を考えていた。
お客さんが詰めかけているのでそんな事は出来ないでいるのであろうと思う。
盆休みをガッツリ取るようだったので、是非なんとかして欲しいと思う。
私にはギョッ!とする店だったが、人気店で評価が高くバエッっていた。
「でもあれはないな」と私は思う。
相当にビックリ体験だった。
気にならない人には気にならないようで、長居してダベる事も出来るようだ。
上手い説得文句が思い付けばまた行ってもいいように思う。
食べ物はヘルシーなようではあったし。